武器の轟音を停止させて対話による解決を――教皇がメッセージ(海外通信・バチカン支局)

アフガニスタンでは駐留米軍の撤退が進む中、反政府武装勢力「タリバン」が攻勢を強め、8月15日には首都カブールを含む全ての主要都市を制圧し、「イスラーム首長国」の建国を宣言した。

急速に変化する同国の状況を受け、ローマ教皇フランシスコは同日、バチカン広場での正午の祈りの席上、アフガニスタン情勢に言及した。国際社会と同じく自身も情勢を憂慮していることを表明し、「武器の轟音(ごうおん)がやみ、解決策が対話のテーブルの上で見いだされていくよう、共に平和の神に祈ってください」と呼びかけた。

さらに、「対話によってのみ(平和はもたらされ)、苦難にあえぐアフガニスタンの老若男女全ての人々は家に帰ることができる。完全な相互尊重を基盤としてこそ、平和と安全のうちに生きることができるのだ」と訴えた。

世界教会協議会(WCC)は16日、同国情勢についての声明文を公表。「数十年間にわたって武力紛争、避難、抑圧、政治腐敗に苦しんできた国民が、ここ数日間の劇的な進展によって、再び恐怖と不安の中へ突き落とされている」と憂慮を表した。

さらに、「アフガニスタンの女性と少女たちの尊厳性、権利の希求が再び拒否されることなく、過去の政権と国際共同体によって保障された教育、自由、権利にアクセスできるように、特別なる祈りを捧げる」と強調。「(今後、)政権を握るタリバンは、管轄する地域で全ての人の尊厳性と権利を尊重していくべきだ」と訴えている。

聖エジディオ共同体(カトリックの在家運動体、本部・ローマ)も17日、イタリア国内のプロテスタント諸教会と合同で声明文を発表した。「欧州各国が、タリバンによって制圧されたアフガニスタンから避難してくる人々を保護するように行動を起こそう」と呼びかけた。

また、「民主主義、表現や教育の自由の価値を信じたことで、数千の人々や子供たちが今、生命の危険にさらされている」と、同国の状況を説明。イタリア政府に対し、アフガニスタンからの避難民が人身取引の被害を受けたり、命の危険を伴う密航を行ったりしないよう、合法的で安全な「人道ルート」を開通し、受け入れるようにと主張している。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)