立正佼成会 庭野日鑛会長 4月の法話から
4月に大聖堂で行われた式典から、庭野日鑛会長の法話を抜粋しました。(文責在編集部)
感激、感動を大切に
今年は桜が早く咲きました。桜の花は、4日間ぐらい咲いた後に必ず散っていきます。桜だけでなく、梅も、バラも、蓮の花も、あらゆる花はみんな咲いて、やがて散っていきます。
「散る桜 残る桜も 散る桜」という良寛禅師の句があります。これは花のことだけでなく、おそらく、人間のことも含めて詠まれたものだと思います。
4月8日は「花まつり」ともいわれ、昔はちょうど桜が見られる時期でした。気候の変動で、今年は桜の開花が今までで一番早くなりました。
植物には脳というものがありません。動物のように脳がなくても、神経がなくても、花は開く時にちゃんと開いて、しぼむ時には、しぼんでいきます。花が咲き、しぼむことを、私たちは当たり前のように見ていますが、このこと一つを考えても、とても神秘であります。
そうした自然現象に触れ、日本人は花見をして、花を愛(め)でるわけです。コロナ禍の中で、自粛生活が続いていますが、やはり大自然の花を美しいと感動することが、とても大事なことの一つではないかと思います。
われわれ人間が不健康で早く老いていく一番の原因は、肉体よりも精神にあるのだといわれています。感激、感動しなくなることが一番よろしくないようです。ですから、外に出て、花を愛でて、「美しいなー」と感激することがとても大事です。常に感激を持って生きていくことが健康のためにもよろしいようです。
そして、本を読む時なども黙読ではなく、音読する。あるいは、簡単な足し算、引き算を常にしていると、認知症などにもなりにくいといわれています。脳を刺激して、年を取らず、元気で生きることにつながるようです。
私たちは、何か難しいものを読んでいる時の方が脳を使っていると思いがちですが、足し算とか引き算とかやさしいこと、単純なことをする、また感激したものを音読する、そういう時が一番、脳の血流が良くなるそうです。それがまた、若返りの秘訣(ひけつ)でもあるといわれています。
降誕会を迎え、緑がとても美しい時期に入りました。自然の美しさを眺めながら感動したり、家にあっても、感動するものを音読したりすることが、私たちを若返らせ、体調を良くしていきます。
(4月8日)
「普回向」の精神をかみしめ、平和へ
宇宙飛行士のラッセル・シュワイカート氏が、こういう言葉を述べられているそうです。
「宇宙空間から眺めると、地球は美しいだけでなく、『生きている』と感じられた。そして自分の生命(いのち)は、地球と繋(つな)がっていると感じた。地球に生かされていると思った。それは言葉では言い尽くせないほどの感動的な一瞬だった」
私たちはもちろん、宇宙飛行士のように地球を宇宙から眺めることはできませんが、宇宙飛行士の方々が宇宙からこの地球を見て、「生きている」と感じ、そして「生かされているのだ」と思って、感動を受けておられるのです。地球に生かされているとは、言葉を替えれば、仏さまに生かされているということです。
コロナ禍の中で元気に生活を続けさせて頂けるのは、本当に有り難いことに違いありません。世界ではいろいろな問題が起こっています。この世界や人類全体が丸ごと平和になるのは、なかなか難しいことですが、宇宙飛行士たちが地球の外から眺めて、「本当に地球は美しい」と言い、全人類はこの一つの地球という船の乗組員であると讃嘆(さんたん)しています。人類は運命共同体であり、一つの「宇宙船地球号」に乗っている者同士ですから、平和な心を持って、お互いに争うことのない世界を目指していくことが大切です。
そのような願いを込めて、私たちは常にご供養の最後に、「願わくは此(こ)の功德を以(もっ)て 普(あまね)く一切に及ぼし 我等と衆生と 皆共に佛道を成(じょう)ぜん」と「普回向」を唱えています。
この「普回向」には、信仰者として、人間として、とても大事なことが教えられています。仏さまの教えを自分一人のものとせず、自分が悟るだけでなく、その功徳は世のため、人のためのものであり、願わくば、此れによって全ての衆生と共に成仏していきたい――そう願い、唱えさせて頂いているのです。
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という宮沢賢治の言葉があります。「普回向」の中には、そうした精神が込められています。いつも、そのような心を持ちながら、世界の平和に貢献していきたいものです。
(4月8日)
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