中央学術研究所「原始仏教聖典資料による釈尊伝研究」完成報告会 28年にわたる世界初の取り組みが結実

中央学術研究所の「原始仏教聖典資料による釈尊伝研究」の完成報告会が開催された

釈尊の年代史と釈尊教団の形成史を明らかにする、中央学術研究所の「原始仏教聖典資料による釈尊伝研究」の完成報告会が11月16日、立正佼成会のセレニティホール(東京・杉並区)で開催され、同研究所の委託を受けた東洋大学名誉教授の森章司氏を中心とする「釈尊伝研究会」のメンバーが成果を発表した。庭野日鑛会長が出席。川端健之理事長はじめ教団役職者、仏教の研究者ら約120人が参加した。

同研究は、1万2000を超える原始仏教聖典を基に、釈尊の事績と教団の形成史を年代順に再構成し、釈尊の生涯を明らかにする世界初の取り組み。平成4年にスタートした。

同研究会は今年、28年間の研究をまとめた「釈尊および釈尊教団形成史年表」と、それを裏付ける聖典の概要を掲載した「総覧」を発刊。一定の成果を得たことで同会による研究は終了し、その総括として今回の報告会が催された。

当日、登壇した森氏は冒頭、本会会員の浄財に支えられ、長年にわたる研究を続けられたことに謝意を表した。続けて、研究の目的に触れ、原始仏教聖典には釈尊の言動の記録はあるものの、日時の記述がないため、「成道」「入滅」などを除いた約40年の言動の年代が特定できず、釈尊の歴史的考察はこれまで、不可能とされていたことを解説。同会では、原始仏教聖典を歴史文献とし、コンピューターの情報集積機能を使って、釈尊や仏弟子たちの事績、当時の生活環境などから年代の推測、検証を繰り返し、釈尊の生涯と教団の形成史を重ねて年代順に再構成できたと詳述した。

報告会で森氏は、研究で明らかになった釈尊の生涯と、釈尊教団の形成史を詳述した

また、釈尊が試行錯誤しながら布教や教団運営に取り組んでいたことも明らかになったと強調。研究成果を基とし、一人の人間として生きた釈尊の伝記を平易な言葉で著すことが新たな目標と述べた。

この後、佼成図書館視聴覚ホールで祝賀会が開催された。あいさつに立った庭野会長は、森氏が自身と同年齢であり、道教では、81歳を「半寿」として祝うと説明した。その上で、28年に及ぶ取り組みに深謝し、さらなる研究に期待を寄せた。