春日部教会 いのちの落語家・樋口氏を迎え講演会 「笑いには、魔法の力が」 病苦を乗り越えた経験語る

いのちの落語家・樋口強氏による「いのちの落語講演会」が4月28日、立正佼成会の春日部教会道場で行われた。教会発足64周年記念式典の席上のことで、会員475人が参集した。

いのちの落語家・樋口氏

大学で落語研究会に所属していた樋口氏は、大手企業で管理職を務めていた43歳の時、3年後の生存率5%といわれる肺小細胞がんを発症した。手術と抗がん剤治療により治癒したが、後遺症として全身の感覚を失った。講演で樋口氏は、自らの闘病生活に触れながら、現在、二人に一人が一生のうちにがんを患い、年間100万人が新たにがんを発症していることを踏まえ、健康とは、病気にかからないことではなく、病を受け入れ、共存しながら自らの人生を輝かせることと説明。がんは自分だけでなく、家族の人生にまで影響を与えるため、共に治療を乗り越えるには自らの回復力を信じ、治療の苦しさの中に希望や目標を見いだして、前向きに生きることが大切と語った。

その上で、抗がん剤治療に苦しんでいた時、落語のテープを聴き、心から笑えたことで痛みやつらさが緩和されたと振り返った。この経験から、「どんなにつらく、苦しい時でも、朝から晩まで一日中笑っていたら、きっと病気にはかからない――それほど笑いには、魔法の力がある」と強調した。

また、治癒の目安とされる術後5年が経った2001年から毎年9月に催す、がん患者とその家族が対象の「いのちの落語独演会」を紹介。独演会に集う人々が、闘病の苦労やつらさを共有し、励まし合い、生きる希望と勇気を養う場になっていると語った。

この後、法座席に高座が設けられ、寄席「いのちの落語」が開かれた。がん患者の闘病体験をもとに樋口氏が創作した落語「一診一笑」を披露。医師免許に更新制度を設け、その試験対策として「樋口塾」で患者への声の掛け方や小噺(こばなし)の実技を面接試験で採点するという設定のストーリーに、会場は和やかな笑い声に包まれた。

女性会員(85)は、「樋口さんの体験を聞いて、『がんばってね』という言葉に一文字足し、『がんばって“る”ね』とするだけで、相手に寄り添う言葉に変わることを知りました。お見舞いに行く機会も増えたので、相手に寄り添う言葉掛けを心がけます」と語った。

なお、佼成出版社からこのほど、樋口氏の著書『がんでも働きたい』が発刊された。