バチカンから見た世界(70) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

金正恩委員長からの招待状を待つローマ教皇

文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領が10月17、18の両日にバチカンを訪問した。これに先立つ15日、政権を支える与党・民主党の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が、情報源を明らかにしないながらも、「来年の春にかけて、ローマ教皇フランシスコが北朝鮮訪問を希望しているとの話を聞いている」と発言していた。

『若者、信仰そして召命の識別』をテーマに10月3日から28日までバチカンで開催された「世界代表司教会議(シノドス)第15回通常総会」に、韓国代表として参加している兪興植(ユ・フンシク)司教(大田=テジョン=教区)は、「教皇の平壌訪問は、朝鮮半島の和平や北朝鮮の国際関係の正常化に向けて大きな一歩になる」と評価。ただし、「短期間での実現は無理だろう」との見解を表明している。北朝鮮政府は現在、カトリック司祭の国内滞在を禁止しており、これが認可され、国民にさらなる信教の自由を保障するといった、教皇の訪朝が実現するための必要条件が満たされるまでには、どれだけの時間が必要なのかが予測できないからだ。しかし、バチカンと中国の間で最近成立した司教の任命権に関する暫定合意を挙げ、「北京に強く依存する北朝鮮とバチカンとの関係にポジティブな影響を与える」とも分析する。

教皇の訪朝に関してさまざまな臆測が世界を駆け巡る中、文大統領は17日、バチカンを訪れ、サンピエトロ大聖堂で行われた「朝鮮半島の和平を祈るミサ」に出席した。バチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」は同日、『平和への道』と題した大統領の寄稿を掲載した。