誰も自殺に追い込まれることのない社会へ――地域のつながりが命を守る NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」代表・清水康之氏
自殺は亡くなり方が衝撃的であるため、最期ばかりが注目されてしまいます。しかし、特別な人が特別な問題を抱えて、突然に自らの命を絶つのではありません。NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」では、自殺で亡くなった方のご遺族から聴き取り調査をして、自殺の実態について分析しています。この結果から、人が自殺に至る、追い込まれるプロセスには一定の規則性があること、自殺で亡くなった方は平均四つの問題を抱えていたことが分かりました。
例えば失業者、無職者の場合は、失業から生活苦に陥り、多重債務を抱え、精神的に追い詰められて自殺に至るというプロセス。労働者ならば、配置転換や昇進を機に職場環境が変わり、人間関係の悪化や過労などで精神的に追い詰められて、自殺に至るというプロセス。主婦ならば、子育ての悩み、配偶者からの暴力、夫婦間の不和から離婚に至り、生活苦に陥って、精神的に追い込まれた末に自殺に至るといったような、例えばそうしたプロセスです。ただし、子供の場合は生活範囲が狭く人間関係が閉ざされているため、学校でのいじめや親子の不和など、要因が一つであっても、自殺につながる重大なリスクになる危険性があります。
目を向けて頂きたいのは、自殺に至るプロセスの始まりが、失業、連帯保証債務、犯罪被害、配置転換、昇進、職場でのいじめ、事業不振、介護疲れ、解雇、子育ての悩み、DV(家庭内暴力)、病気、親子間の不和など、日常の中で誰にでも起こり得る出来事だということです。一つの問題が悪化して別の問題を引き起こし、それが合わさって悪化し、さらに別の問題を引き起こすといった具合に複数の問題の連鎖が、人を自殺へと追い込んでいくのです。