<Focus>対話を通じ共に成長していく「法座」に感銘 本会ロンドンセンターのマーティン・テイラーさん(67)

今も忘れられないのは、「妙法蓮華経如来寿量品第十六」に出遇(であ)った衝撃です。それまで私は、仏さまというと、インドに生まれ、悟りを得た人間釈尊を思い描いていました。ところが、十六番では、法華経に説かれる「久遠の本仏」は、宇宙の根源の法(大生命)であると説かれていて、世界の見え方が変わったのです。自他の命は宇宙の大生命と一つである――そう学んで私の脳裏に浮かんだのは、05年に自死した次男・スチュワートのことでした。

彼の死は人生で最もつらい出来事です。ただ、教えに沿ってその悲劇的な出来事について考えを巡らせていくうちに、スッと腹に落ちたのです。亡き息子の命も宇宙の大生命の一部であり、たとえ肉体が消え、目に見えなくなっても、共にあり続ける、私とつながっているのだと。それまで、悲しみと喪失感の原因だった彼の死から、前向きに生きるエネルギーを得たような気がしました。苦しみをも成長につなげていく佼成会の信仰は、私の人生を豊かにすると確信し、21年3月5日の教団創立記念日に入会しました。まるで、ジグソーパズルの最後のピースを見つけたような喜びを感じました。

現在は、入会者即布教者の言葉を胸に、スコットランドで教えを伝えています。おかげさまで、4人のサンガをお導きすることができました。

サンガと共に法華経の研鑽(けんさん)に励み、スコットランドで教えを伝えている(写真=ロンドンセンター提供)

普段、ギタリストとして生徒たちに技術指導を行う時、「Listen(良く聴いて)」と伝えることが少なくありません。良い音楽家は、良い音楽を作るため、常に良く聴き、学び、インスピレーションを得るからです。今、この言葉を、改めて自身に投げかけています。

誰にも話せない苦しみ、つらさを心の奥底に秘めている人に出会い、音楽家が良く聴くようにその声を感じ、良く聴くこと。そして、教えに沿った見方を分かち合い、共に励まし合って人生を歩んでいきたいと心から思います。そして、できるなら、その人が救われるためのご縁になりたいと強く願っています。人々の声を聴き、救いの手を差し伸べる、観音さまのような存在になること――それが私の目標です。

お知らせ

立正佼成会ロンドンセンターは本会をより身近に感じてもらうため、YouTubeの公式チャンネルを開設しました。会員のインタビュー映像では、本稿に登場したマーティン・テイラーさんのインタビューも公開されています。詳しくは下記URLからご覧ください。
https://youtu.be/2s-YGsFmk9g