第15回善知識研究会 デジタルアーカイブの現状とAI倫理について議論

基調講演を行う下田正弘氏(「Zoom」の画面)
立正佼成会中央学術研究所による「第15回善知識研究会」が10月2日、オンラインで開催された。テーマは『アーカイブズの現状と課題―最新AI技術の活用を視野に入れて―』。同研究所外部講師、客員研究員、教会長など65人が参加した。
当日は、武蔵野大学ウェルビーイング学部教授で一般財団法人人文情報学研究所代表理事の下田正弘氏が、『AI時代における学術研究と人文学の使命―仏教の智慧(ちえ)に照らされて―』と題して基調講演を行った。漢訳仏典の集成である『大正新脩大蔵経』のテキストデータベース化を主導してきた下田氏は、「アーカイブとは、継承されてきたものを中断して過去化し、過去を保存・蓄積して未来につなげる仕事。それをどの程度意識するかによって、出来上がったものの意味、内容が変わる」と示した。その上で、自然科学、社会科学、人文学に共通するテーマである「存在(何が)」と「認識(どのように知るか)」を軸に理論を展開。「技術としてのAI(人工知能)が拡張言語として機能し始めている今、AIが作り出す世界の内実を解明するのが人文学の使命であり、解明の鍵となるのが仏教思想である」と述べた。
事例発表では、浄土宗総合研究所主任研究員の齊藤舜健氏が『浄土宗総合研究所におけるデジタルアーカイブの構築と利用』をテーマに、真如苑総本部教学部部長代理の木船賢太郎氏は、『真如苑のアーカイブズとAI~未来につなぐアーカイブズ~』をテーマに、宗教教団におけるデジタルアーカイブの作成や運用面の課題などについて発表。佼成出版社ICT事業部アーカイブズ課長の北村浩一氏は「立正佼成会デジタルアーカイブ」について報告し、「支える」「伝える」「拡(ひろ)げる」「挑む」を柱に、新たな布教形態や救いの方法を生み出すためのデジタルアーカイブを目指していきたいと語った。
パネルディスカッション、質疑応答では、今後のデジタルアーカイブの可能性や生成AI活用における倫理的責任などについて意見が交わされた。





