学林四科合同のつどい ユダヤ教との対話

世界の宗教指導者との対話を通して、学林の使命である「実践的仏教」「宗教協力」への認識を深めることを目的に、6月22日、「学林四科合同のつどい」がオンラインで開催された。今年のテーマは『世界宗教―ユダヤ教との対話』。正統派ユダヤ教徒としてラテンアメリカ全土の宗教対話・協力をリードし、紛争や環境問題などの課題解決に取り組むエリアス・シュチトニスキ師が講義に立った。

シュチトニスキ師は、ユダヤ教は「安息日」や「食事の規制」「家庭の清浄」といった戒律の遵守を大切にし、「単なる儀式の集合ではなく、複雑な、人生全体を貫く生き方そのもの」であると説明。現代では時代遅れに思えるため、社会的障壁を逃れてキリスト教への改宗を選ぶ人もいるが、本来は日々の生活や人間関係を高める「神聖な枠組み」であり、自身は信仰生活を送る上で、大切に守り、実践していると述べた。

また、19世紀以降の反ユダヤ主義の増長により、「イスラエルの地」の主権を取り戻す「シオニズム運動」が誕生した背景を詳述。この議論は現在に至るまで大きな課題となっており、2023年には民間人を標的とした凄惨な襲撃事件にまで発展してしまったと話した。その上で、平和を実現するには「あらゆる憎しみに立ち向かう勇気」が必要と強調。宗教的アイデンティティーに違いがあるからこそ、それぞれの信仰の智慧(ちえ)や霊的な洞察を織り交ぜて、平和に向けた協力ができると力強く訴えた。

講義の後、学林生とシュチトニスキ師との対話の時間が持たれ、質疑応答や意見交換が行われた。

最後に、杉野恭一学林学長が謝辞。宗教とは違いを超えて「どう共に生きるか」を問いかけてくるものと話した上で、一人ひとりの平和への願い、希望が、必ず誰かの救いになると伝え、「恐れず、目をそらさず、世界と出会ってください」と呼びかけた。