WCRP/RfP「第3回東京平和円卓会議」 戦争を超え 赦しと和解を目指す(動画あり)
非難の応酬を経て、即時停戦への思いが一致
東京平和円卓会議の最終日、WCRP/RfP国際共同議長を務めるヴィヌ・アラム博士(シャンティ・アシュラム会長)から同会議で採択された声明文が発表された。満場一致を示す拍手が湧き起こる会場には、対立関係にあるウクライナとロシアの宗教指導者も同席していた。
全参加者が署名した声明文には、全てのいのちは尊いという共通認識の下、諸宗教による平和のビジョンを実現するための長期的な行動計画「東京平和プロセス」が明記された。その最初に記されたのは、「戦争地域における無条件かつ無期限の停戦を訴える:各宗教団体を代表する宗教指導者たちは、ロシアとウクライナそしてその他のすべての紛争地域における即時の無条件かつ無期限の停戦を共同で呼びかける」という言葉だ。

ロシアのヴァクタン・キプシーズ氏が発言する様子
いくつもの紛争地域から「ロシアとウクライナ」の国名が記されたのは、平和の実現に向けて話し合われた分科会が機縁だという。分科会後の全体発表でアラム博士は、約20分間の延長がなされた分科会で、両国の宗教指導者たちは、見聞した戦争の現状を胸が張り裂けそうになりながらも共有し、宗教間の協力、連携による平和構築活動の可能性を模索したと報告。「(互いの状況に対する傾聴は)円卓会議の中でもなかなか行われてこなかったこと」と双方の信仰的な姿勢をたたえた。また、両者から「大切な人を守りたい」「殺戮(さつりく)を止めたい」といった切実な訴えがなされ、停戦を呼びかけるべきとの意見で一致したと述べた。
しかし、両国の宗教指導者たちは、当初から相互理解を深められたわけではない。ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年当時、第1回の会議では互いに目も合わせられないほど殺伐とした雰囲気となり、非難の応酬もあったという。一方で、悪化し続ける情勢の中でもどうにか光を見いだそうと、宗教指導者たちは危険を伴いながら参加を続けた。次第に、信頼と連帯感が育まれ、互いの尊厳を認め合える関係が構築されていった。今回の合意は、これまでの会議を踏まえた重大な成果といえる。

エヴストラティ・ゾリア府主教(右)を含む、ウクライナの宗教指導者たち。
ウクライナのエヴストラティ・ゾリア府主教(ウクライナ正教会対外教会関係部副部長)は、「国や信仰が異なると、経験、善悪に対する考え方も違います。そうした異なる背景の人々が集まり、知識や痛みを共有することによって互いを理解できるのです」と振り返る。「宗教指導者が一堂に会して、率直かつ真摯(しんし)に意見を交換できたことが非常に良かった」とうなずくロシアのヴァクタン・キプシーズ氏(ロシア正教会、教会・社会・メディア関係シノドス副議長)の表情には、平和への一歩を踏み出せたというような安堵(あんど)感が表れていた。
閉会式の中で、WCRP/RfP国際共同議長のエマニュエル府主教(トルコ・カルケドン長老府主教)は、この場に集った宗教指導者は紛争を直接的に解決するためではなく、平和構築へのプロセスの一部となり、実現に向けたメッセージを世界に発信するために招聘(しょうへい)されたと述べた。その上で、「宗教指導者は意思決定者ではありませんが、私たちのやり方で社会やコミュニティーに影響を及ぼし、世界平和に向けてより多くの貢献ができる」と参加者を激励した。
最終日の夕食会終盤、ウクライナとロシアの宗教者が語り合う姿があった――。宗教指導者たちはこれからも、声明文の冒頭に記された「平和は実現可能である」という希望を持ち、共に祈り、行動していくことで「和解への道」を切り開いていく。
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