中央学術研究所が『大乗仏典思想叢書』第10号、第11号を発刊 仏典の理解深め仏教思想研究発展に寄与

大乗仏典思想叢書は『妙法蓮華経』原典研究に貢献する資料として活用が期待される

中央学術研究所はこのほど、『妙法蓮華経』の原典(底本)研究に資するPhilosophica Mahāyāna Buddhica Monograph Series『大乗仏典思想叢書(そうしょ)』の第10号『初期仏典と初期大乗仏典―並行・類似詩脚索引―』および、第11号『梵文(ぼんぶん)法華経「ケルン・南條校訂本」ローマ字本・脚注補完第4分冊』の2点を発刊した。第10号は、同研究所学術研究室の西康友主幹と黛千洋特別研究員が共同で、第11号は西主幹が編纂(へんさん)した。

第10号では、初期仏典と初期大乗仏典の電子化テキストを用意し、独自開発したプログラムにかけることで、レーベンシュタイン距離(二つの文字列間の類似度を示す距離)による類似率60.7%以上の偈文句を抽出し、それらを類似率順に列挙した。これによって、仏典の典拠・定型句などを知る手がかりを見つけることができる。

また、第11号の発刊は、西主幹が文部科学省の外郭団体「日本学術振興会」から科学研究費として助成を受けた研究課題、「梵文法華経諸問題解明のための基盤テキスト構築『ケルン南條本』校訂へ向けて」(JP21K00058)に関連した最も主要な研究成果で、梵文法華経研究の標準・基準テキスト『ケルン南條本』の脚注補完の一部となっている。

『ケルン・南條本』は、ケルン(Johan Hendrik Caspar Kern, 1833‐1917年)と南條文雄(1849‐1927年)の両⽒による梵文法華経写本を⽤いた初の校訂本(5分冊)として、1908年から12年にかけて刊⾏された。複数の梵文法華経写本を使いまとめられた校訂本だが、脚注の不備や、異なる書写年代・出土地域を区別しない写本の校合(きょうごう)など、編纂上の問題が発刊当初から指摘されていた。

なお、同研究所では、仏教経典の解読や研究の資料として同叢書が広く活用されることを願いウェブサイトで全ページを公開。以下のURLから、PDF版を入手できる。

https://www.cari-saddharmapundarika.com/philosophica