「世界の仏教と対話を続けるバチカン」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
危険は脱していないが生命に別条なし——教皇の肺炎
88歳になったローマ教皇フランシスコは、年末年始にバチカンの聖マルタの家で2度転倒し、首に青い痣(あざ)をつくり、腕吊(つ)りを首に掛けたまま公共の場に姿を見せていた。さらに1月には風邪(かぜ)を引き、呼吸困難のため長いスピーチが読めなくなり、代読を要するケースが増えてきていた。そして、2月14日には、ローマ市内のカトリック総合病院ジェメッリに入院し、気管支炎と診断され、18日には両肺に肺炎を発症していると公表された。教皇は若い頃、アルゼンチンで右肺の一部を摘出する手術を受けており、その疾患のために、憧れていた日本での布教を断念せざるを得なかった経緯がある。今回の入院によって、教皇の健康に関する世論の懸念が強まった。
病院の医師団による投薬で教皇の熱も下がり、19日には「教皇の病状は安定しており、血液検査で若干の改善が見られた」とのレポートが公表された。教皇はその間、自発呼吸し、最小限の側近と会い、通常業務を執行していると明らかにされた。ソファーで食事もでき、朝食後には朝刊に目を通しているとも伝えられた。
教皇の入院から一週間が経過した21日、総合病院の外科部長で、教皇を担当する医療チームの責任者であるセルジオ・アルフィエリ教授と、バチカンで教皇の主治医を務めるルイジ・カルボーネ医師が記者会見に応じ、「教皇が慢性の気管支炎を患っている」と明らかにしながら、病状に関し「危険な状態を脱していないが、生命には別条なし」との判断を示した。また、教皇の腹部(教皇は結腸の手術を受けている)や心臓に問題はなく、「治療が効果を示し、入院当時と比べれば、病状は大きく改善されたが、些細(ささい)なことでバランスを崩しかねない」とも指摘した。教皇の入院期間については、肺炎の治療期間は長く、「少なくとも来週いっぱいの入院が必要とされる」と明らかにした。医師団が最も恐れているのは、病原菌が血液内に入り(敗血症)、他の器官へ侵入していくことだが、現在、その兆候はないとのことだ。
バチカン記者室が22日に公表した病状レポートは、「教皇の病状が相変わらず危機状況にあり、危険な状態を脱していない」と前置きしながら、「長時間に及ぶ呼吸困難に陥り、鼻カニューレによる酸素投与を必要とした」と伝えた。さらに、「血液検査の結果、貧血を伴う血小板減少症が見られ、輸血が必要になった」とのことだ。「教皇の意識は敏感で、ソファーに座って一日を過ごしたが、予後の判断は保留されている」とも発表された。
翌23日に公表された病状レポートでは、「教皇の容態は、相変わらず危機的状況にあるが、昨夕から呼吸困難が治まった」と記している。濃縮赤血球が注入されて、ヘモグロビン(血色素)の数値が上がり、血小板は安定している。血液検査で、軽い初期の腎不全が見られたがコントロールされている、との発表もあった。鼻カニューレによる酸素の投与は続けられており、教皇の反応は敏感で正常の状態にある。しかし、「病状が複雑であるので、投薬が効果をもたらすまで、予後の判断は保留され続ける」との医師団の見解だ。同レポートは最後に、「教皇が今朝、治療に当たるメンバーと共にミサに参加した」と記している。
24日のでは、病状が予測できない状況にありながらも、「いくらか良くなった」と明かす。呼吸困難も無く、いくつかの検査結果で「良くなった」のだ。軽度の腎不全も、憂慮する状態にはないと見られている。酸素の投与は続けられているが、投与の量は減らされた。
しかし医師団は、複雑な病状を考慮し、「予後は保留されたまま」とする。朝に聖体拝領し、午後を業務の遂行に費やした教皇は夕刻、ガザ地区で司牧活動(信徒の指導)を続ける、教皇と同じアルゼンチン出身のガブリエル・ロマネリ神父と電話で話した。
また、同日、教皇がバチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿、同省のエドガル・ペーニャ・パラ大司教(長官代理)と懇談したと、翌日に公表された。一晩「良く休んだ」教皇は25日朝、業務を再開。病状は、「予断を許さないが安定しており」、呼吸不全の症状も起きていないという。血液検査の結果も安定し、両肺のレントゲン写真も撮られた。「予後は保留され続ける」と、レポートには記してある。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)