「バチカン諸宗教対話省長官のアユソ枢機卿が逝去」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

核の脅威の中で対話と和解を――教皇がイランの宗教者にアピール

バチカン諸宗教対話省はローマでこのほど、イラン・テヘランの「諸宗教・諸文化間対話センター」と、『若者の家庭における教育――キリスト教徒とムスリム(イスラーム教徒)にとっての挑戦』をテーマに12回目の対話会議を開いた。

参加者たちは11月20日、ローマ教皇フランシスコに謁見。教皇は彼らに向かい、12月7日にテヘランの大司教を枢機卿の位に上げると告知し、「この登用が、イラン全国家への勲章である」と強調した。また、「小さな群れ」であるイランのカトリック教会が、「反政府だというのは嘘(うそ)だ」とも断言した。

さらに、対話会議のテーマである家庭内での若者の教育に言及。家庭を「教育の胚芽」と呼び、「諸世代を結び付けるために決定的な役割を果たし、叡智(えいち)をもって子どもたちに宗教教育を保障する、おじいちゃん、おばあちゃんたちの役割」を重要視した。異なる宗教を信仰する夫婦の家庭を「特権的な諸宗教対話の場」と呼び、「彼らの歩みを奨励」した。

また、信仰と宗教の実践が弱体化していく社会、急速に変化しながらも正しい方向に歩むとは限らない社会について考察する教皇は、そうした変化が家庭に直接的な影響を与えると指摘。このような状況下で家庭が教育という使命を遂行していくためには、「国家、学校、宗教共同体、他の諸制度など、全ての機関からの援助を必要とする」と主張した。

加えて、教育分野における家庭のさまざまな使命の中で、「家庭から出ていく教育」を尊重し、「諸宗教対話の重要性が、家庭という機構的な範疇(はんちゅう)から出て、大きくて普遍的な人類家族に出会っていくことにある」とも語りかけた。

しかし、その対話の条件が「オープンで、誠実、尊敬に満ち、友愛的、具体的でなければ実を結ばない」と忠告。神を追求していく若者たちに対する教育では、「良心と信教の自由が、基本的人権の土台である」との確信を継承していくことが大切だと示し、「信教の自由は、各々の儀式を遂行する自由だけではなく、自身の信仰と、その実践方法の分野における決断に関しても完全なる自由を保障する」と説いた。

「憎悪、緊張、紛争、核戦争を引き合いに出した恐喝によって分断され、傷つけられた世界」に目を向ける教皇は、最後にイランの宗教者たちに対して、「今日の新聞にも、核戦争を恐喝の道具として使った記事(プーチン大統領による核兵器使用基準の引き下げ承認)が載っている」と話しかけた。こうした世界の状況では、「平和の神を信じる者が、祈り、対話、和解、平和、全人類の安全保障と包括的な人間の進化のために胎動していくことが重要」「われわれの共なる平和への努力が、世界、特に若者たちの目に、私たちを信頼ある者として映させる」と訴えた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)