伝記小説『黒い蜻蛉――小説 小泉八雲――』 著者が来日し邦訳出版記者会見(動画あり)

東京都内のアイルランド大使公邸で開かれた出版記者会見で、八雲について語るパスリー氏

今年8月、アイルランドにゆかりのある作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の一生を描いた伝記小説『黒い蜻蛉(とんぼ)――小説 小泉八雲――』の日本語版が佼成出版社から刊行された。その出版記者会見が9月24日、東京都内の駐日アイルランド大使公邸で開催された。

本書は、『怪談』『骨董』などの作者・八雲の没後120年に合わせて邦訳されたもの。幼い頃に両親と生き別れた経験などから劣等感や孤独感を抱えていた八雲が、居場所を求めて渡った日本で仏教や神道、先祖崇拝といった精神文化に触れ、また妻・セツをはじめさまざまな出会いを通して人生が大きく変わっていく様子を描いている。

当日の様子(クリックして動画再生)

当日は、著者であるジーン・パスリー氏らがスピーチ。八雲が過ごしたアイルランドに暮らすパスリー氏は、日本の社会や宗教に対する八雲の洞察に感銘を受けたことが、8年をかけて本書を執筆するきっかけとなったと説明した。また、八雲の生い立ちを学び、「さまざまな困難を乗り越えた経験が素晴らしい作品につながっていることに気づいた」と語り、自著が「今も息づく日本の伝統的な文化、精神性を知るきっかけになってほしい」と呼びかけた。

本書を翻訳した小宮由氏は、自然を敬い感謝するなど、日本に古くから伝わる宗教心が人々の暮らしの基盤となっていることを知り、「“日本人とは何か”という問いを頂いたことが財産」と発言。日本の精神文化を学び直すことが思いやりや優しい心を育み、平和な世界につながるのではないかと述べた。

小泉八雲記念館の小泉凡館長は、「自然を畏怖して生きる大切さを読者に問いかけてくれる」と本書の感想を語った。

また、会見ではこのほか、妻・セツを主人公にしたNHK連続テレビ小説「ばけばけ」が来秋に放送されることが紹介された。

なお、28日には普門メディアセンター(東京・杉並区)で出版記念読書会とサイン会が行われた。

『黒い蜻蛉――小説 小泉八雲――』

ジーン・パスリー著
小宮由訳
佼成出版社
2750円(税込)

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