「多様性のうちにおける一致を求めて――教皇のインドネシア訪問」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

教皇がインドネシアでムスリムとの合意文書に署名

「イスティクラル2024年度合同声明文」に署名する教皇(バチカンメディア提供)

ローマ教皇フランシスコは9月5日、「友愛通路」の訪問後、イスティクラルに併設された「諸宗教者の集い」の会場に移動し、「イスティクラル2024年度合同声明文」に署名した。同国からは、ムスリム(イスラーム教徒)を代表して、イスティクラルの指導者であるナサルディン・ウマール師(大イマーム)が署名に臨んだ。

合同声明文は、「この数十年間、私たちの世界が、(人類の)非人間化と気候変動という明確で重大な危機に直面している」という世界状況の分析で始まる。「非人間化という世界現象は、警鐘を発するべき数の犠牲者を出す暴力と、蔓延(まんえん)する紛争によって性格づけられる」と示し、その中で、「宗教が、往々にして、道具化されていることは特に憂慮されるべき」と主張している。

さらに、「われわれの共通の家」(地球)に対する人間の暴挙が、自然災害、気候危機といった破壊的な状況を生み出していることに触れつつ、インドネシア国家の建国精神である「パンチャシラ」という哲学原則をも含む各宗教の教えを踏まえ、以下の実践を呼びかけている。

◆われわれの宗教伝統によって分かち合われる価値観に沿って、暴力の文化と世界を苦しめる無関心を克服するため、効果的な対処を促進していく
◆諸宗教者が、それぞれの宗教的歴史と霊性的伝統に沿って世界の危機に対処し、その原因を追及して適切な行動を起こすことに協力する
◆唯一の人類家族が世界レベルで存在すると認知されているからこそ、諸宗教対話が、特に、宗教の利用で引き起こされる争いを含め、地方、地域、国際紛争の解決のために、効果的な役割を果たすことを広めていく
◆全ての善意の人々に対して、われわれが前世代から受け継ぎ、私たちの子どもや子孫に伝えていかねばならない生態系と資源の確固たる保全を呼びかける
(宮平宏・本紙バチカン支局長)