中東、ウクライナでの緊張緩和に向けて動くバチカンの平和外交(海外通信・バチカン支局)

パレスチナ領ガザ地区を実効支配するイスラーム過激派組織ハマスの最高指導者であるイスマイル・ハニヤ氏が7月31日未明、イランの首都テヘランで暗殺された。ハニヤ氏の拠点はカタールだが、前日に挙行されたイラン新大統領の宣誓式に出席するため、テヘランを訪問していた。

ハマスの壊滅を主張するイスラエルは、暗殺事件への関与について言及していない。だが、イランの国家最高指導者であるハメネイ師は、「イスラエルへの報復はイランの義務」と述べたことで、中東での緊張が一気に高まった。

バチカン報道官のマテオ・ブルーニ氏は8月12日、バチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿が同日朝、イランのマスード・ペゼシュキアン新大統領と電話会談したと明かした。就任したばかりの同大統領に対して祝辞を述べたパロリン国務長官は、「両国共通の関心事」以外に、「聖座(バチカン)の中東状況に関する真剣なる憂慮」を表明。「紛争の拡大を、あらゆる方法で避ける」「対話、交渉、平和の道を選択していく」ことを要請したとのことだ。

また昨年、ローマ教皇フランシスコの特使として、ウクライナ和平に向けた雰囲気づくりをするため、キーウ、モスクワ、ワシントン、北京を訪問したマテオ・ズッピ枢機卿(イタリア・カトリック司教会議議長)は8月14日、中国政府の李洪・ユーラシア担当特別代表と電話で会談した。バチカンの公式ニュースサイトである「バチカンニュース」が15日、伝えた。

この中で、両氏は、昨年の訪問を踏まえ、「ウクライナでの現状に対する強い憂慮を表明し、正義にかない、恒常的な和平に向けての適切なる国際的保障を基盤に、戦争当事者間の対話を追求していく必要性を強調し合った」とのことだ。

教皇は18日、バチカン広場で執り行った正午の祈りの席上、世界から参集した信徒たちに対し、「中東、パレスチナとイスラエル、ウクライナ、ミャンマーや、あらゆる紛争地域で、暴力行為や報復が停止され、対話と交渉のために努力することで、平和への道が開かれていくように祈る」とアピールした。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)