第19回奈良県宗教者フォーラム 『日本のこころと宗教の役割』 興福寺の森谷貫首が基調講演

基調講演に立った森谷貫首は、仏塔が日本に伝来した歴史や、奈良時代における仏教建築の特徴を紹介した

『日本のこころと宗教の役割――神様・仏様の素晴らしさ』をテーマに、第19回奈良県宗教者フォーラム(主催・同実行委員会)が9月14日、奈良市の興福寺会館で開催された。奈良県、奈良市が後援した。

同フォーラムは、同県の宗教団体が集い、宗教・宗派を超えた交流と対話を深めるもの。立正佼成会奈良教会も運営に携わっている。今回、コロナ禍で実施を見送っていたプログラムのメインである講演会が3年ぶりに行われた。

当日は、県内の宗教者56人が参集。冒頭には「世界平和ならびに疫病退散祈願法要」が行われ、興福寺の僧侶による読経供養が厳修された。

夛川良俊実行委員長(興福寺執事長)、奈良県の荒井正吾知事のあいさつに続き、興福寺の森谷英俊貫首が『五重塔のある風景』をテーマに基調講演。来年始まる同寺五重塔の大規模修理にちなみ、仏塔がインドで生まれ、日本に伝来するまでの歴史を紹介した。

森谷貫首は、仏塔が仏伝の物語を表す建造物として誕生した後、不老長寿を願う中国の神仙思想に影響され、地上と天上をつなぐために高層化されるなど、各地で発展を遂げた経緯を詳述した。また、日本では奈良時代、平城京に巨大な仏塔や仏教寺院などの堂宇が林立したことに言及。これらの建築物は、中国の最先端の文化や技術、人材の影響を受けて完成したと推測し、「当時のお寺は、宗教と科学の総合センターとして日本をけん引する役割を担っていた」と述べた。その上で、日本人の文化や精神性を見つめ、信仰を生活に取り戻すことが宗教者の役割との見方を示した。

この後、『次代を担う方々による感話』と題し、若手宗教者が講演した。登壇者は、春日大社の井関亮輔権禰宜、興福寺のザイレ暁映録事、天理教青年会本部の深谷弘和氏、葛木坐火雷神社(笛吹神社)の持田八重禰宜、金峯山寺の中村巴鷹本堂主事の5人。奉職を通じて神仏の有り難さを実感した体験や、コロナ禍の社会で宗教が果たす役割について、それぞれの立場から語った。