庭野平和財団主催シンポジウム コロナ禍での宗教と未来を考える
『2030年の宗教:コロナ禍の中で』をテーマに公益財団法人庭野平和財団によるシンポジウムが2月26日、オンラインで行われた。宗教者やマスコミ関係者ら41人が参加した。
同財団は今年度、コロナ禍における宗教団体の公益性、宗教に関わるデジタル化の広がり、また、儀礼文化のあり方などについて専門家による4回の研究会を実施した。今回のシンポジウムは、その成果を報告するもの。研究会参加者8人が、宗教を巡る現状と、それを踏まえて推測される「2030年の宗教」の姿について発表した。
この中で、板井正斉皇學館大學教授は、三重県内815の神社の周辺人口を調査した結果を発表。大半の地域で人口が減少しており、今後もその傾向が続くとの見通しを示した。
藤本頼生國學院大學准教授は、神社の数が近年減少していることを説明した上で、今後も減り続けるとの見解を表明。自然災害などによる損壊で施設の維持管理が難しいことも、神社の合併や解散が進む一因になると述べた。
相澤秀生跡見学園女子大学兼任講師は、曹洞宗が実施する宗勢調査のデータを基に宗派寺院が減っている現状を紹介。檀信徒、法人収入の減少、住職の後継者不足などにより、この状況が続けば30年までに約2000カ寺が解散、合併するだろうと語った。
大谷栄一佛教大学教授は、仏教の各宗派やマスコミによる現代仏教研究に言及。その一つとして、1980年代末から過疎化と寺院の減少との関係性が指摘され、寺院の減少が危惧されてきたと強調した。一方、人々の危機意識が強まる時ほど、仏教に関心が寄せられるとしてコロナ禍の現在、仏教関連の書籍やネット情報、大学での講義などへのニーズが高まっていることを紹介した。
川又俊則鈴鹿大学教授は、日本のキリスト教界の課題として、信者の減少、高齢化、教会の統廃合、コロナ禍による教会離れについて詳述。これらへの対応策の一つとして、オンラインを活用した集会や説教の取り組みを挙げ、時間や場所に縛られずに、多くの人が教会や教えに触れられると語った。
藤丸智雄浄土真宗本願寺派総合研究所副所長も同派による宗勢基本調査の結果に触れ、今後も見込まれる寺院の減少に警鐘を鳴らした。その上で、従来の葬儀や墓の管理に加えて、インターネットを活用した活動など汎用的サービスが必要ではないかと述べた。
寺田喜朗大正大学教授は、新宗教が教勢を伸ばした背景として、高度経済成長期に地方から都市部に移住した人々や専業主婦などの精神的な受け皿として機能した側面を説明。女性の社会進出や核家族化、地域コミュニティーの崩壊など社会構造が変化した現在は、インターネットの活用など時代に合わせた布教ツールやノウハウが求められていると指摘した。
石井研士國學院大學教授は、コロナ禍で一部の寺院や神社が冠婚葬祭や通過儀礼をオンラインで行っていることを紹介。一方で、規模を縮小してでも、教会や寺社で祭事を行うケースが大半であることから、宗教施設を特別な場所と考える人々の意識は変わっていないと述べた。