コロナ禍での宗教者の役割とは 国際宗教研究所が公開シンポジウムを開催

パネリストを務めた4人の宗教者は、コロナ禍における寺社や教団の活動を報告した(「Zoom」の画面)

『コロナ禍を見据える宗教者の視座』をテーマに国際宗教研究所の公開シンポジウムが2月19日、オンラインで開催された。研究者や宗教者など118人が参加。立正佼成会から中央学術研究所の橋本雅史所長らが参加した。

今回のシンポジウムは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で宗教活動が制限される中、寺社や教団の対応を報告するとともに、コロナ禍での宗教者の役割や今後の課題について意見を交わすもの。信者や地域住民と向き合う4人の宗教者が発表した。

天祖神社(東京・板橋区)の小平美香宮司は、コロナ禍の中で例祭の規模を縮小し、参加人数も制限せざるを得なかったものの、社会の安寧と人々の無病息災を地域住民と共に祈る大切さを再認識できたと報告。地域の各神社に参拝する人がコロナ禍以前より増えている状況にも触れ、祈ることで日常の不安な気持ちを静める場として神社が見直されているのではないかと語った。

法泉寺(東京・墨田区)の西山哲央住職は、感染症の長期的な流行によって、葬送に対する檀信徒の意識が急速に変化してきたと指摘。一日葬や直葬のように簡略化した葬儀を選択するケースが増えたが、墓前供養も含め、人々の墓参の頻度は減っていないと語り、宗教者の寄り添いや祈りに対するニーズはコロナ禍でむしろ高まっていると強調した。その上で、今後も「供養」に対する多様な考え方に対応できるよう努めていきたいと話した。

日本基督教団東中野教会(東京・中野区)の浦上充牧師は、同教会の多くの信徒が高齢者であり、感染への不安が大きかったことから、毎週の礼拝は対面とオンラインを組み合わせて実施してきたと説明。オンラインの導入により、病気を患う人や遠方に住む人などが、パソコンやスマホを使って自宅から参加できるようになったと語った。また、コロナ終息後もオンラインの活用を考えているが、人と人との触れ合いによる癒やしも大切だとし、いかにして対面とオンラインのバランスを取り、一人ひとりの苦悩に丁寧に寄り添っていくかが今後の課題と述べた。

真如苑(総本部=東京・立川市)の岡崎敦子青年会副会長は、コロナ禍により対面での活動を自粛する中、オンラインを活用して法要を行い、その様子を信徒に配信してきたと説明した。さらに「心の救いの従事者」としての自覚から信徒がそれぞれの場でできることを考え、コロナ禍で苦しんでいる人に手を差し伸べてきた事例も紹介。世界的な危機にある今こそ、「利他の心」を発揮して行動することが重要との認識を示した。

この後、全体討議が行われ、社会から求められている宗教者の役割について意見が交わされた。