パンデミックに対応する新たな国際協定を 欧州理事会常任議長が提案(海外通信・バチカン支局)

3月30日にオンラインで行われた欧州理事会(EU首脳会議)の会合で、シャルル・ミシェル常任議長が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を踏まえ、今後の新たなパンデミックに備えて「新しい国際協定の制定」を提案した。

今回の世界的流行で、「人間の弱さによる分裂」が生じ、「防御」の必要性が明らかになったためだという。『一致した健康アプローチ』(One Health approach)と題した協定案は、パンデミックの初期段階からの情報交換、医薬品の研究と供給のプロセス、必要な備品や対応措置を定める国際協力の枠組みについてだ。

さらに、ワクチンの生産と供給のプロセスに透明性を持たせることも目的に定めている。同常任議長は、これまでの欧州におけるワクチンの供給プロセスに関して「透明性の確保を図らざるを得なかった」と語り、「徹底した透明性の確保が、同協定の重要なポイント」と強調した。背景には、EUと多国籍企業の製薬会社で交わされた契約の透明性に問題があり、契約通りに順守されているかが分かりにくく、各社によるEU加盟国へのワクチン供給が大幅に遅れている現状がある。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は、今後の備えとなる同協定案を歓迎。「今、行動を起こさなければならない」と発言し、「現在のパンデミックの収束を待ってはいられない」と述べた。同ウイルスの感染拡大が発覚してから今日までの「490日に及ぶ世界的な危機は、人類の最悪と最良の側面を見せつけた」と語り、「私たちは、行動を起こす勇気を持たなければならない」と訴えた。

また、WHOでも提案された新たな国際協定の可能性について話し合ったことを表明。「米国と中国を含めた全ての国が新協定に前向きな反応を示した」と明かし、「全加盟国を制定のプロセスに巻き込むことができると思う」と期待を表した。

その上でテドロス事務局長は、国連総会が開催される5月中には、新協定の制定の可能性が明確になるとの見方を示し、協定にはワクチンに関する「情報と技術の共有が含まれなければならない」と主張した。これは、ワクチンの「知的所有権」(特許)のあり方に関わる発言でもある。

バチカンの公式ニュースサイトである「バチカンニュース」は4月1日、「(パンデミックへの対応に向けた)新たな国際協定の構想は、主要7カ国首脳会議(G7)議長国の英国、20カ国・地域首脳会議(G20)議長国のイタリアを含む26カ国の首脳が支持している」と報じた。

ローマ教皇フランシスコは同4日、バチカンで開催された復活祭の席上、世界の信徒に向けてメッセージを発表した。この中で、「パンデミックとの闘いにおいて、ワクチンが本質的な(解決の)手段となる」と指摘。「“ワクチンの国際主義”の精神に沿い、全ての国際共同体がワクチン供給の遅れを克服するために努力し、特に、より貧しい国々を含めてワクチンの分配を促進していくように」と訴えた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)