全世界のカトリック教会が核兵器禁止条約を支持(海外通信・バチカン支局)

1月22日の核兵器禁止条約発効を前に、ローマ教皇フランシスコは同20日、バチカンから世界の信徒に向けて中継された一般謁見(えっけん)の席上、同条約の意義について説教した。

この中で教皇は、同条約は、一瞬にして大勢の人々の生命を奪い、環境を破壊し、その後も長期にわたって被害をもたらし続ける核兵器を、明確に法的に禁止する史上初めての国際法であると強調。全ての国と人々に対して、「核兵器なき世界」の構築に必要な条件を整えていくとともに、人類が求める平和を推進し、多国間協力の強化に取り組む大切さを訴えた。

一方、全世界のカトリック司教たちは22日、被爆地である長崎と広島から歴史的アピールを行った教皇の「核なき世界」構築への願いと指導に沿い、約20カ国の信徒や修道者たちと協力して同条約の発効を歓迎する声明文を発表した。核兵器は、大量破壊兵器の中でも最も凶悪な兵器であり、「長年、非倫理的であると考えられてきたが、今日(22日)、とうとう違法とされた」と喜びを表した。同日、バチカンの公式ニュースサイトである「バチカンニュース」が伝えた。

同条約は、2017年に122カ国の賛成により国連で採択され、昨年10月に批准した国と地域が50に達し、発効要件を満たした。声明文でカトリック司教たちは、多くの国が核兵器禁止条約の成立に賛成し、世論調査でも核兵器廃絶を支持する人が多い現状に「勇気づけられる」としながらも、人類と環境を破壊する核兵器使用の可能性は残るとして憂慮の念を表明。世界は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)、気候変動、貧富の格差拡大といった問題とともに、全ての人にとって脅威である核兵器の問題にも対処していかなければならないと訴える。

また、カトリック教会内においても、「核兵器禁止条約への参加国が広がるように、カトリック教会の役割について討議、決議がなされること」を挙げ、それぞれの国や地域のカトリック司教会議、カトリックの機関や財団に対し、「核兵器の開発、製造に関わる企業や銀行に投資していないかの調査」を促し、そうしたことが判明した場合は投資の中断を呼びかけている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)