国家の主権、移民の尊厳と人権の尊重を――メキシコの司教たち(海外通信・バチカン支局)
米連邦最高裁は7月26日、トランプ大統領が進めるメキシコ国境の壁建設に関し、議会の承認なしに国防費を建設に転用する政権の計画を認める判断を下した。同大統領は「大勝利」として、この判断を歓迎した。
だが、その壁の向こう側のメキシコでは30日、カトリック教会の司教たちが『移民の尊厳』と題する声明文を発表。「メキシコ政府は効果的な移民政策を持たず、米国政府の考えの範疇(はんちゅう)と強制に屈服し、人権とより良い生活を求めて移住する人々の状況を、通商(米国への輸出)と混同して、一貫性のない政策を実行している」と批判した。トランプ大統領は、メキシコ政府の不法移民対策の不備を理由に、同国からの輸入品に対する関税を引き上げると警告していた。
声明文ではまた、「国家の尊厳性と主権は、移民の尊厳、人権と同じように、あらゆる交渉を超えるものでなければならない」とし、メキシコのカトリック教会と市民社会は、自らの生命を危険にさらすこともいとわず、「移民やその人権を擁護する人たちを支援してきた」と主張している。さらに、移住を求める人々は、飢餓、貧困、暴力、雇用機会の喪失、社会的絆の欠如などの理由からそうせざるを得ず、秩序が保たれた状況の下で「自由な移民の往来が保障されなければならない」とも指摘している。
今回の声明文の発表は、同国のカトリック教会が現時点で、「国境において引き離される家族の構成員(両親と子供たち)、米国からの強制送還に対する懸念、移民を恐怖に陥れる政策、国の移民政策の転換」といった諸問題を憂慮していることが背景にある。これらを踏まえて、「政府が、私たちの諸国民(南米諸国民)にとって真に有益となる賢明で、彼らの尊厳が満たされる一貫した決断を下すように」と訴えている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)