『日本国憲法と部落差別』と題し、職員人権啓発講座 部落史研究家の上杉聰氏が講演
『日本国憲法と部落差別』をテーマに、立正佼成会同和推進本部による「第23回職員人権啓発講座」が7月12日、法輪閣大ホール(東京・杉並区)で行われた。教団、事業体の職員200人が参加した。今回の講座は、部落差別の歴史と現状について学び、特に日本国憲法が定める基本的人権の尊重や法の下の平等について理解を深めることが目的。関西大学文学部講師で部落史研究家の上杉聰氏が講演した。
講演の冒頭、上杉氏は資料を基に部落史に触れ、平安中期の京都で、為政者の支配慣行として始まった差別が全国に広まり、江戸時代に制度化された歴史を詳述した。
その上で、数年前に大学生を対象に行った部落差別に関する意識調査の結果を報告。「若い世代で差別意識は着実に低くなった一方で、現実には結婚の際に、相手の家族から不当な扱いを受けるなどの差別がある」と解説した。
こうした状況を踏まえ、全ての国民が法の下に平等であると記し、あらゆる差別を禁止する日本国憲法第14条にのっとって、2016年12月に「部落差別解消推進法」が成立した意義に言及。同法律には、国が地方公共団体と協力して部落差別に関する実態を調査し、相談体制を充実させるなど、差別のない社会の実現に向けた教育や啓発に努める責務が定められている。「差別解消に向けて、国の務める内容を明示した法律ができたことは大きな前進」と評価した。
また上杉氏は、刑法上の罰則を設ける検討も必要ではないかと提案した。「刑罰の設置で部落差別禁止に向けた実効力が高まるとともに、差別が犯罪であり、重大な人権侵害との認識が広まる」と語った。
さらに、「人の人生を踏みにじる差別はいけない」との人権意識が社会に浸透するには、「学校での同和教育の推進だけでなく、人のいのちの尊さを教える宗教の力が不可欠」と強調した。