【一般社団法人日本メンタルアップ支援機構代表理事・大野萌子さん】年々増加する“電話恐怖症” 自己理解が緩和のカギに

緊張や不安を「言語化」する

――他人軸の思考はどのような影響を与えていますか

他者からどう見られるかを考えるあまり神経がすり減り、そうしたストレスが電話への苦手意識につながっています。相談の中でも一番多い事例です。この思考は協調性があり、和を保つといった素敵な面も持ち合わせていますが、人目を気にし過ぎて本心を見失う場合があります。若者だけでなく、日常的に電話を使いこなしてきた世代で、社会経験が豊富な中高年にも同じことが言えます。過去に、仕事仲間の長電話を切りたいと思いながらも、〈相手が不満に思って関係が悪くなるのでは〉と考えて断れず、我慢して対応を続けたけれども気持ちが態度に出てしまい、結果として関係にひびが入ったという方もいました。こうした事態を招かないためにも、年齢に関わらず、気持ちにふたをせずに心の声を聞いたり、何をすべきなのかと自覚したりして、自分の感情や考えを大事にしてほしいと思います。

以前、電話が怖くて業務に支障が出ていた人が、「自分の緊張ポイント」「不安の正体」を丁寧に言語化することで、〈自分がハードルを上げていた〉と気づき、徐々に電話への抵抗が減ったケースがありました。そのほかにも、「今日の気分を一言で書く」「買い物をする時に行動の理由付けをする」「嫌だな、困ったなと感じた時、心に引っかかった部分を見つける」など、自己理解を深める方法はたくさんあります。自分の長所を見つけて認められる人は、他者の長所にも気づいて認められます。まずは自分と向き合ってみてほしいと思います。

――電話への苦手意識がどうしても拭えない場合はどうすれば?

本当に苦手なことは、克服するのにも相当なエネルギーが必要な上、乗り越えられない可能性もあります。かかってきた電話に出る勇気がなかなか持てない時は、折り返して電話をかける、もしくはメールですぐに返事をするなど、代替案で補うのが効果的です。一つのことにとらわれない方が、前向きに努力していけるのではないでしょうか。

人それぞれ得手不得手が異なります。“全員が同じようにできなければならない”という感覚をお互いに持たないよう心がけたいものです。自分にとっての当たり前は、他者にとっての当たり前とは限りません。「人と自分は違う」という姿勢で、相手の世界を尊重し、違いを否定しないことが大切です。とはいえ、無理に迎合しなくていいのです。誰しもが抱えている不安や苦手意識を、「そう感じているんだね」と受けとめることが、愛ある社会を実現する確かな一歩になると思います。

プロフィル

おおの・もえこ 1968年、神奈川県生まれ。法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事を務める。公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。人間関係改善に必須のコミュニケーションなどの分野を得意とする。官公庁や大手企業などに向けた講演や研修のほか、本の執筆などを行っている。

大野萌子さんの本