【総合地球環境学研究所教授・大山修一さん】ごみで砂漠を緑化 人道危機を救うリサイクル

立正佼成会は長きにわたって、「一食(いちじき)を捧げる運動」の浄財を基に、エチオピアやマラウイなどアフリカ各国を支援してきた。ボランティアで現地を訪ねた会員も多い。本紙読者・会員に関心の高いアフリカは今も、貧困や紛争、難民、感染症など多くの課題を抱えている。最貧国の一つで国土の砂漠化に苦しむのが、西アフリカ・サヘル地域に位置するニジェール。同国でユニークな活動に挑むのが大山修一さんだ。20年以上、農村で暮らしながら、ごみを使った土壌改善に取り組んできた。「都市と農村の物質(有機物)循環を作り出すことが砂漠化対策のカギ」と言う。ごみ活用による緑化について聞いた。

ごみを畑に撒く農法

――ニジェールでの研究はいつから始めたのですか

2000年から始めています。ニジェールの年間平均気温は30度を超えます。極限の乾燥地帯で、不安定な気候と干ばつ、過剰な耕作や放牧が要因で土地の荒廃(砂漠化)が進んでいました。砂漠化は飢餓や貧困、民族紛争を引き起こしているのです。

私の滞在する村では主要穀物であるトウジンビエを生産していましたが、8割の世帯は十分な食料を確保できず、食料不足が慢性化している状況でした。

大山氏が滞在した村の風景(2006年/現地の写真は大山氏提供)

サヘル地域は地質が古く、風化が進んだ結果、硬く固まった岩盤が多く、栄養も水も乏しい。作物の収穫量を増やすには土壌を良い状態に保たなければなりません。そのため村人は、気温が下がる夕方になると、屋敷内で集めたごみを畑に運び入れていたのです。生活の中で排出された「肥やし」を年中畑に撒(ま)き、熊手を使ってならしていました。

肥やしとは生活ごみで、トウジンビエの穂軸やわら、家畜糞(ふん)、樹木の枝葉のほか、履きつぶしたサンダルや古着、ビニールも含まれました。有機物を入れることで土が肥えて生産力は再生されますが、自然界で分解しそうにない廃物を利用するのはなぜか。その疑問は、村人と共に作業する中で解けました。

多様なごみを積み上げることで、飛んでくる砂を受けとめて侵食を防ぎ、土砂を堆積させる作用があったのです。さらに、餌を求めて集まったシロアリがごみを分解して、水はけのよい団粒構造に土壌を改良する働きもありました。痩せた土地を回復するために理に適(かな)ったやり方だったのです。

ただ、大量の肥やしを畑に撒くことができるのは一部の富裕者に限られます。彼らは農閑期にウシやヤギを飼養する牧畜民と野営契約を結びます。これは夜間に家畜を契約者の畑に入れて肥やしとなる糞尿を落とす仕組みです。土地を修復する方法はこの二つですが、食うに困った人々はごみ投入も野営契約もできません。小さな農村にも格差が生じているのです。

またサヘル地域の国々では、収穫期に農耕民と牧畜民の間で放牧した家畜の食害を巡って衝突や紛争が起こります。3年間で3600人が犠牲になったとの報道もあり、私が調査する地域でも傷害事件や賠償問題が幾つも起きています。人々を取り巻く貧困や飢餓、争いの根本は砂漠化にあります。生産性が上がり人々が豊かになれば、これらは解決できるのです。

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