楽生(らくいき)~楽に生きるを極めるヒント~(9) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子

「正しい」の反対語とは!?
前回は、人の目を気にせず、自分のこころに正直になることが、価値観が変化してきた現代を生きるためにはとても重要だというお話でした。今回は、その延長線上で「正しさ」について考えてみたいと思います。
私たちは、小学生の頃からテストの答えには正解があることになじんできました。〇か×か、必ず答えがあったのです。仕事も決められたやり方を正確に行い、成果を出すことで、評価を得られたのです。家庭・職場・地域にもそれぞれの「正しい」があり、それに従えば安心で、常識や秩序を守ることができました。この時代、「正しい」の反対語は「間違い」だったのです。
しかし、時代が変わり、情報量が増え、価値観が多様になった今、自分の常識で「正しい」を主張すれば、衝突は避けられません。
たとえば私の夫は、風邪をひくとミカンを食べます。ビタミンCが効くと信じているからです。私は、風邪をひいたらかつ丼が食べたくなります。豚肉に含まれるビタミンB群で体力回復を早められ、免疫力が上がると考えているからです。私は柑橘(かんきつ)類は喉に負担がかかると思い、夫は揚げ物は胃腸に負担がかかると考えています。まったく違いますが、どちらも理にかなっています。育った環境はもとより、体質の違いや好みで「正しい」は変わるのです。
食べ物だけではありません。掃除の仕方でも「隅から丁寧に掃く派」と「まず全体をざっと掃除機がけする派」、洗濯物の干し方でも「きっちり並べる派」と「風通し重視で間隔を広く取る派」──どれも状況や考え方によって「正しい」やり方になります。

イラスト・みよし
だから、「正しい」の反対語は「別の正しい」なのです。正しい答えはひとつとは限りません。大切なのは、自分の選択を大切にしながら、他者の「もうひとつの正しい」に誠実に向き合うことです。
そのために大切なのが、対話です。対話とは同意することではなく、相手の世界を理解するためのもの。まずは相手の話を集中してしっかり聴く「傾聴」が役に立ちます。以前に紹介した『ゼロ秒思考』A4メモ書きを考案した赤羽雄二さんは、アクティブリスニングという名で、特別な話の聴き方を推奨しています。
アクティブリスニングとは、相手の話に集中し、理解しようと努める聴き方です。相手の言葉だけでなく、表情や声のトーンにも注意を払い、相づちや質問を挟みながら、共感的に聴きます。自分の意見を挟まず、相手の矛盾を指摘せず、5分でも10分でもいいので、相手の話を遮らずに聴くことです。そうすると、相手との関係性が変化します。相手もあなたの話を聴こうとしたり、自分の矛盾点に気づくこともあります。場合によっては、全く違う第三の意見や新しい解決策を、一緒に生み出す可能性も広がります。
こうして「別の正しい」を受け入れながらも、自分の軸を保つことができます。正しさ比べから解放され、こころが軽くなり、自信も育っていきます。
今月の笑い
私たちは、無限の可能性を持っています。小さなことにこだわらず、大きく動いてこころを開放しましょう。両手首を重ね、グーパーしながら、手を大きく∞(無限大)の形に動かす「イソギンチャク笑い」です。
YouTube「高田佳子の笑トレで楽生」で、笑いの体操の動画が見られます。
プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫県神戸市生まれ。日本笑いヨガ協会代表、一般社団法人笑いイノベーション学会理事長。早稲田大学非常勤講師。人が一生笑って生きられる環境づくりがライフワーク。40代で老年学修士号を取得し、2009年にインドで笑いヨガを学ぶ。介護予防・認知症予防・ストレスケアに役立つ「笑トレ」を提唱し、科学的知見をもとに心と体を軽やかにする生き方を発信している。
笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”






