年頭法話 立正佼成会会長 庭野日鑛
生き生きした人生を
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」を強く実感
あけまして、おめでとうございます。
新型コロナウイルスの脅威(きょうい)は、一昨年以来、日常生活に大きな影響を及ぼしてきました。最近は、国内の感染者数が一気に減りましたが、世界では再び増加している国もあります。今後も油断することなく、感染予防に努めてまいりましょう。
本会の信者さんは、人を思いやることが身についていますから、道場が閉鎖されても、電話や手紙、メールなどで手どりを続けてこられました。本当に頭が下がります。
私は、このコロナ禍(か)を、人間が真に大切にすべきものは何かを見つめ直す機縁にしたいと申し上げてきました。
感染が拡大する中で「あの人は元気だろうか」「生活に困っていないか」「子供たちは大丈夫だろうか」と思いやることは、人間として一番大切な心です。そうした心を磨き深めていくことを通して、日常生活を省(かえり)みると、本来は省(はぶ)いてもよいことがいくつもあるのではないでしょうか。
「省」という字には、省(はぶ)く、省(かえり)みるという二つの意味があるとお話ししてきました。二年に及ぶコロナ禍を通して、お互いさま、何を省いたらよいか、何を省みるかが、一層はっきりとしてきたのではないかと思います。
このコロナ禍は、日本での感染が終息したとしても、他の国で感染が続けば、いつ再び脅威に晒(さら)されるか分かりません。
宮沢賢治の「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という言葉が強く実感されます。仏の大慈悲心を現代的に表現したといわれるこの宮沢賢治の言葉を、お互いさま、改めてかみしめたいものです。
こうしたことを踏まえ、私は「令和四年次の方針」を次のようにお示ししました。
今年、本会は創立八十四周年を迎え、そして、法燈継承以来、三十年が経過いたしました。
今年次も自粛生活が続くものと予想されますが、新型コロナウイルスの感染状況を見据(みす)えつつ、信仰生活を通して、お互い様に、夫婦として、父母として、親として、未来を担(にな)う幼少年・青年達を如何(いか)にして育て、人格の形成をはかるか、如何にして家を斉(ととの)えていくか、さらに、日本の伝統を受け継いで、如何にして立派な国を打ち立てていくか、創造的に真剣に務めて参りたいと願っています。
昨年、この紙面でお伝えしたように、夫婦(若い世代)、父母(壮年の世代)、親(高齢の世代)のそれぞれが、「人を植える(育てる)」という根本命題(こんぽんめいだい)に全力を尽くすことは、本会のみならず、社会や国においても非常に重要なことです。
その基本は、何より家庭での教育にあります。斉家(せいか=家庭を斉えること)を通して、しっかりした人間教育、躾(しつけ)がなされて初めて、学校での教育も充実し、本当の意味で「人を植える」ということに結びつくのです。
そして、現実に家庭を斉えるには、「ご宝前を中心にした生活」と「三つの実践」(家庭で朝のあいさつをする。人から呼ばれたら「ハイ」とハッキリ返事をする。履物=はきもの=を脱いだらそろえる)が重要であるとお話ししました。このことは、本会会員として、常に大事にしてきたことであります。