バチカンから見た世界(136) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

クレモネージ神父の殉教から70年が経った今も、ミャンマーは相変わらず内戦状況にある。2021年のクーデターで政権を掌握した軍政に対し、少数派諸民族の武装勢力と民主派の国民防衛隊が共闘しているのだ。国軍のミンアウンフライン最高司令官は、アウンサンスーチー氏を支持する民主派を「テロリスト」と非難。市民が展開する抵抗運動について、「当初は平和的だったが、その後、テロリストが無実の市民を攻撃し始めた」と主張し、「国軍と政府は行動を起こす必要がある」と警告していた。

それを実行する国軍は4月11日、同国北西部サガイン地域の民主派組織が開催した独自の地方行政組織の設立式典を標的とし、ヘリコプターや戦闘機を使って空爆し、子供を含む170人(14日現在)を殺害した。国軍による政権掌握以来、最悪の惨事となった。国軍は近頃、テロ組織の拠点だとして、民主派や諸民族の武装勢力陣営、教会や仏教施設を頻繁に空爆するようになった。PIMEの国際通信社「アジアニュース」によると、そうした空爆がロシア、中国、セルビア(ロシアの同盟国)から輸入されたジェット戦闘機、ヘリコプターなどの武器を使用して展開されているという。中国からの武器輸入は2022年に前年比で2倍となり、ロシアからの武器輸入量は中国の2倍に上るとのことだ。

「アジアニュース」は、「ウクライナで使われているものと同じ兵器が、ミャンマーの人々を殺している」と伝え、国軍がロシアの「ロザトム社」から技術提供を受けて「核情報センター」を設立したのは、核兵器の開発に向けて動くためではないかという国際世論の憂慮を報じている。

国軍は今年2月、非常事態宣言を延長し、8月に予定されていた総選挙は無期延期となった。3月末には、選挙管理局を通して、民主派指導者アウンサンスーチー氏の「国民民主連盟」(NLD)を含む40政党を解散すると発表。4月には、カチン州バプテスト教会の牧師で、非暴力の人権擁護者として知られるフカラム・サムソン牧師に対して6年の刑期を言い渡した。サムソン牧師は、国軍による市民への残虐な抑圧と空爆を告発したことで、不法結社、国家に対する名誉棄損(きそん)、テロ行為という三つの罪状に問われていた。