バチカンから見た世界(68) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

信教の自由をめぐって――バチカンとトランプ政権

ローマ教皇フランシスコは8月22日、バチカンで「国際カトリック立法者のネットワーク」に所属する各国の国会議員たちと面会した。カトリック立法者たちはこれに先立ち、ローマで『信教と良心の自由』をテーマに国際会議を開き、謁見(えっけん)したのだった。

席上、教皇は現在の世界の状況について、「不寛容で、攻撃的、暴力的な原理主義が広がり、先鋭化している地域では、キリスト教や他の少数派宗教を取り巻く環境が劇的に悪化している」とし、差別や虐待、迫害が起きていることに対して、「政府の対応が十分になされていない」との見解を表明。信教・良心の自由は、真理の絶対的な妥当性を認めない「世俗的相対主義」と「宗教的過激主義」という相反する二つのイデオロギーの脅威にさらされており、偽りの宗教に対処していかなければならない」と懸念を表した。

ただし、言葉や行動によって過激主義や不寛容と闘っていくからといって、同じように過激で不寛容な態度で対抗してはならないとの考えも示唆。カトリックを信仰する議員たちに対して、「キリスト教の人間観と社会観に沿った法案を、権威を持って提案する」大切さを示し、そうした価値観を共有する人々と協力していくことを呼び掛けた。この呼び掛けは、国によっては憲法で礼拝の自由を保障しながら、市民を宗教の実践から遠ざけ、宗教共同体の活動を困難なものとする政権がある状況を踏まえ、社会の共通善を追求すべき政治家たちに、「信教の自由」という基本的人権を守るための貢献を求めてのことだ。

一方、各国の「信教の自由」に関するレポートを毎年公表してきた米国務省は、7月24日から26日まで、首都ワシントンで「信教の自由促進のための閣僚級会議」を主催した。80カ国から40人の外相を含む、約370人の政府関係者、諸宗教指導者、人権組織、国際機関、市民運動の代表者らが参加。宗教者としては、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム、ヒンドゥー教、仏教、バハイ教、シーク教、ヤズディに加え、世界の各地で迫害を受けている、さまざまな少数派宗教の代表者が参集した。

24日には「信教の自由の擁護のために市民社会、組織が果たす役割」を検討。25日は、世界各地で迫害されている諸宗教の信徒や指導者の発表が行われ、26日の全体会議では、各国政府や国際機関の代表者が「信教の自由の擁護に関する政府の役割」について意見を交換。「信教の自由を守るための世界レベルでの挑戦」「迫害を受けている諸宗教への新たな対応」「信教の自由を守るための努力と協力」といったことが議論された。その後、首都を流れる川の名の用いた「ポトマック宣言」が採択された。