核兵器の保有は非倫理――教皇が各国大使にアピール(海外通信・バチカン支局)
ローマ教皇フランシスコは1月9日、バチカンに駐在する各国の外交団に対して年頭のあいさつを行い、『分断と戦争の強まる世界における平和の希求』をテーマにスピーチした。バチカン市国は現在、世界183カ国と外交関係を結んでいる。
スピーチの中で現教皇は、教皇ヨハネ二十三世が公布した回勅『地上の平和』(1963年)の公布60周年に言及し、その前年10月の「キューバ危機」で、「人類はミサイル攻撃による破滅の危機にあった」と追憶。キューバ危機を回避できたのは、「人類が核兵器の破壊力について知り、対話を優先させた」からだと指摘した。
さらに、「現在でも、核兵器は世界を恐怖と脅威に陥れながら、威嚇に使われている」と述べ、「核兵器の保有は非倫理」であり、「核兵器による威嚇のもとでは、皆が敗北者となる」と警告。「この視点から、(中断している)イランとの核合意が、より安全な未来を保障するために、できるだけ早く具体的な解決策を示せるように」と願った。
また、「現在のグローバル化された世界で、第三次世界大戦が進行している」と分析。死と破壊をもたらすロシア軍のウクライナ侵攻に言及し、「(ロシア軍による)民間のインフラに対する攻撃で、人々が爆弾や暴力だけでなく、飢餓や寒さでも死亡している」と指摘した。そして、第二バチカン公会議で発布された「現代世界憲章」を引用しながら、「都市全体、または、広範囲にわたる地域と住民の無差別な破壊を目的とする戦争は、神と人類に対する犯罪である」と糾弾した。
教皇は、第三次世界大戦が「断片的な形で進行している」と注意を促し、「パレスチナ人、イスラエル人の間での暴力行為の増長」が、「聖都エルサレムをも襲っている」ことに憂慮を表明。ユダヤ教徒、キリスト教徒、ムスリム(イスラーム教徒)に共通する聖都が、「出会いと平和共存のシンボルとなり、アクセスと典礼の自由が過去の伝統(Status quo)に沿って保障、尊重されるように」と願った。併せて、「イスラエル、パレスチナの両国(バチカンはパレスチナを国家として承認)政府が、国際法と全ての国連関連決議案に沿い、2国家解決と、その全ての関連事項を実現していくために、直接的な交渉を開始する勇気と決意を再び持てるように」と話した。