きしみ始めたプーチン政権とロシア正教会(海外通信・バチカン支局)
欧州の世論では、ロシアのプーチン政権がきしみ始めたとの観測が流れている。
その根拠は、ウクライナ侵攻を巡るロシアへの経済制裁をはじめ、スポーツ、文化芸術、科学といったあらゆる分野で「ロシア除外」が進み、国際的な孤立が強まっているからだ。同時に、ウクライナへの侵攻政策に反対する、あるいは一線を画すロシア国内世論の動きが活性化していることも大きい。
これらの要因が相乗効果となってプーチン政権への圧力が強まっているが、バイデン米大統領は、そのために「プーチン大統領が、より攻撃的になっている」と見ていると伝えられる。ロシアでは、インターネットや、政権の統制が行き届かない情報にアクセスできる都市部で反戦運動が強くなってきているという。ロシア国内での反戦運動は、ウクライナ侵攻に宗教的動機を与えようと試みていたロシア正教会の内部でも始まっている。ロシア正教会の233人に及ぶ司祭や輔祭(ほさい)がこのほど、ロシア軍のウクライナ侵攻を「兄弟の殺害」と呼び、「ウクライナにおいて私たちの兄弟姉妹が、何の罪もないのに受難を強いられていることを嘆く」とのアピールを公表した。
ロシア正教会で今年2月27日の日曜日は、神による「最後の審判」を思い起こす日(断肉の主日=最後の審判の主日)とされ、3月6日の日曜日には神による「赦(ゆる)し」が記憶されることになっている。ロシア正教の神父たちは、誰もが「最後の審判」を避けて通ることができないとし、「全てのロシア正教信徒の救いという視点から、彼らが呪(のろ)い(戦争)という重荷を背負って最後の審判に臨むことがないように」と願っている。さらに、キリストの血は、世界に生命を与えるために流されたが、「その印である聖体拝領の秘跡が、生命ではなく、永遠の苦悩を与える、殺人の命令を下す者たちによって受け取られるようになる」と非難した。この声明は、戦争の命令を下す政治指導者とキリスト教の教えが相いれないという、明確な表明だ。