バチカンから見た世界(54) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
イタリアの総選挙で圧勝したポピュリズム政党
3月4日に投開票が行われたイタリアの総選挙で、大衆の願望や不安を利用して扇動する“ポピュリズム政党”とされる「五つ星運動」と「同盟」(旧称「北部同盟」)が圧勝した。
「五つ星運動」は2000年、人気コメディアンのベッペ・グリッロ氏と実業家のジャンロベルト・カザレッジョ氏によって創設された。「反体制」の政治運動を掲げる。「同盟」は1991年、同国北部の自治権拡大を目的にウンベルト・ボッシ氏を指導者として結党され、時には、ベネト州を中心とする北部の分派独立を主張し、物議を醸したこともある。強硬な移民政策を掲げる極右政党との位置付けだ。
今回の選挙戦で、「五つ星運動」は、長引く経済の停滞によって生じた国民間の貧富の差と、国内の南北間に生じている経済格差の拡大を背景に、低収入の国民に一定の生活保障金を給付する「市民所得」制度の創設を公約として掲げるキャンペーンを展開。これによって、失業率が高く、貧困層が拡大する南部の有権者の強い支持を受け、選挙に圧勝した。開票後に「五つ星運動」の勝利が明らかになると、南部では「市民所得」の申し込みが始まったという。巨額の赤字を抱える国家財政の現状で、財源をどう確保できるのかも明らかにされず、この政策を疑問視する声が強いにもかかわらずだ。
一方、「同盟」は、地中海を渡って同国南部に漂着したアフリカ、中東やアジアからの大量の密航者を国外追放するとの公約を打ち出し、得票数を伸ばした。反イスラームを旗印とする政党でもある。