中央学術研究所の「第10回善知識研究会」 日本人の宗教意識をテーマに

『日本人の宗教意識の過去・現在・未来――宗教が日本社会で果たしてきた役割とその未来像を探る』をテーマに、立正佼成会中央学術研究所による「第10回善知識研究会」が10月21、22の両日、東京・杉並区にある本会のセレニティホール、行学園、佼成図書館で開催された。同研究所講師、客員研究員、学林生など、約120人が出席した。

21日、同研究所の川本貢市所長が研究会の趣旨説明。続いて、國學院大學神道文化学部の石井研士教授が『「無宗教時代」の宗教を理解するために』と題し、基調講演に立った。

石井氏は冒頭、日本人の宗教の特質について説明。宗教団体の信者になることが主ではなく、日常生活の中に、年中行事として宗教的行為が息づいている点が特徴と指摘した。その中で、特定の教団に所属して宗教施設を定期的に訪れ、宗教的儀礼を行う信者数は、人口の約1割と紹介。さらに日本人の代表的な宗教的行為として「初詣」や「お盆お彼岸の墓参り」「神棚・仏壇への参拝」を挙げ、現代人は、教義のような宗教的理念より、神仏や自然の存在に対して、畏敬の念などの宗教的意識を抱く傾向が強いと説明した。

基調講演に立つ石井研士教授

一方、少子高齢化や地方の過疎化といった社会構造の変化によって葬儀・葬送の形態、先祖供養に対する日本人の意識が変わり、“宗教離れ”が進んでいると指摘。都市部で神棚・仏壇の保有率が低下し、寺院の経済格差が顕著になり、将来の存続が危ぶまれる「限界宗教法人」が出てきている現状などをデータを基に解説した。

その上で、高度情報化社会の中で、日本人の宗教性は不安定な状態にあると強調。「宗教とは精神文化の根幹をなすもの」であり、宗教が安定して存続していくために、宗教団体の存在は不可欠で、役割は重いと訴えた。

この後、基調講演を受け、参加者は2日間にわたり、分科会で活発に議論を交わした。全体会議では、宗教団体による社会貢献のあり方、若者への信仰継承などについて発表された。