一歩を踏み出す勇気 作家・荒川祐二氏

僕は中学の頃から自分のことが嫌いで、「変わりたい」と周囲に言い続けてきました。でも、何かに挑戦する前から「僕には無理」と決めつけ、ずっと逃げてきたのです。

何も変わらず大学3年生になったある日、一つ上の兄から、「おまえ、口ばっかりやんけ。ほんまに変わりたかったら実際に行動せい」と、本気で怒られました。自分にできることを考え、「毎朝6時から新宿駅でゴミ拾いをする」と答えました。

すると兄は「絶対に無理。人は変わりたい、これからやるぞという時、気持ちだけが高ぶってこの時点でもう変わった気になってんねん。本当におまえが変われる時は、実際にゴミ拾いを継続した時や」と。そこで1カ月間と期間を決め、2006年11月8日から僕の挑戦は始まりました。

当日、新宿駅東口に行くと、最初に目に入ってきたのが、大勢のホスト、ホームレス、ヤクザ、酔っ払い。『一緒に掃除してくれる人募集!』という手書きの看板を背負い、掃除を始めたのですが、そこはホストやヤクザの縄張りだったらしく、僕は彼らから嫌がらせを受けました。

翌日は「偽善者」とののしられ、3日目に集めたゴミをまき散らされ、4日目、ほうきを折られ、5日目には殴られました。顔に唾を吐かれたこともあります。つらかったですが、1カ月間は耐えようと通い続けました。

でも、人間ですから、限界が来ます。目標の半分に差し掛かった頃、プロレスラーとホストがサラリーマンを相手にけんかをしているのを目撃しました。野次馬が大勢いて、「誰か止めて」という皆の思いが一つになった時、横にいたヤクザが僕に、「おまえ、止めに行け。これもボランティアだ」と言ったのです。皆一斉に僕を見ました。

仕方なく止めに入ると、サラリーマンと間違えられ、一本背負いを受けました。首を捻挫して病院からの帰り道、自分が情けなくて泣きました。〈人生で初めて本気になれた結果がこれか。人生変わらんのやな〉と。

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