TKWO――音楽とともにある人生♪ トランペット・河原史弥さん Vol.3

大人になった時に「音楽っていいな」と感じられる生活を

――最後に、吹奏楽に励む中高生のトランペット奏者にメッセージを

どの楽器もそれぞれに難しさがありますが、トランペットは、多くの方が想像する以上に難しい楽器だと思うんです。音域は他の楽器に比べてとても狭いのに、音が出にくい。特に高音は、練習を重ね、技術を磨かないと出ないんです。

中高生の中には、思ったほど音が出なくて悩んている人が多いと思います。でも、焦らないでほしい。正しい練習をすれば音は出るようになるので、基本を一つ一つ大切にしていってほしいですね。よく僕が学生に教えるのは、ロングトーン、リップスラー、スケール、タンギングの四つの基礎練習を満遍なくしてくださいということ。そして、今自分が出せる音域で、より高いクオリティーを目指して練習するのです。

高音域が出ないということのほかに、タンギングができないといった悩みも多いかもしれません。学校だと、一人だけの空間をつくるのは難しいですが、個人練習の時に自分の楽器の音と向き合う時間をつくると、悩みの解決に近づけます。

もう一つ大事なことがあります。楽しく演奏してほしいということ。練習は大変だけど、音楽の楽しさを忘れないでほしいですね。学生時代のコンクールで燃え尽きてしまう、といったことをよく耳にしますが、それで終わることなく、どういう形にせよ、音楽とともに人生を歩んでほしいというのが僕の願いです。

全員が音楽家を目指す必要はないのですが、吹奏楽経験者にとって、楽器さえあればいつでも演奏できて、自分も他人も楽しくできるもの、それが音楽だと思うんですよね。今、将来のことを言ってもピンとこないかもしれませんが、大人になった時、ふと思いついたように楽器を出して、楽しい記憶も一緒に引っ張り出して、やっぱり音楽っていいなと感じられる生活を送ってほしいのです。学生時代に、自ら望んで音楽と出合うことができたのですから、練習の大変さだけを記憶するのでなく、音楽の楽しさを味わう、このことを大事して演奏してくれると、吹奏楽部の一先輩として、うれしいですね。

プロフィル

かわはら・ふみや 1993年、東京・板橋区生まれ。2016年に洗足学園音楽大学を首席で卒業。優秀賞に選ばれた。同年に、TKWOに入団。第87回日本音楽コンクールトランペット部門3位、第36回日本管打楽器コンクールトランペット部門2位に入賞した。