おもかげを探して どんど晴れ(18) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)

画・笹原 留似子

いのちの授業を受けた子どもたち(1)

私は現役の復元納棺師です。事故や災害、遺体の発見が遅れたことによる腐敗などで、生前のおもかげをなくされた方を元に戻してご家族にお返しし、もう一度出会い直して頂くお手伝いをしています。「おもかげ復元師」とも呼ばれています。

もう一つ大切にしているものがあります。全国各地の中学校、高校を中心に行っている、「いのちの授業」です。復元納棺師としての経験を活かし、生きることや死を迎えることについて、子供たちと一緒に考えていくものです。授業の依頼を数多く頂きますが、本職の復元納棺師の仕事があるため全てにお応えできないのですが、都合のつく限りお受けしています。気が付けば10年を超えました。

いのちの授業の後には、多くの学校の生徒さんから感想文が届きます。中でも印象的だった内容を3回に分けてご紹介します。

〈中学1年生・男子〉
いのちの授業を聞いて、ぼくはヤバいと思いました。ぼくは人の気持ちを考えず、怒って人に悪口を言ってしまうことがあります。笹原さんの話を聞いて、思い通りにいかない時、理解して欲しいのにしてもらえない時、やることがたくさんあって思い通りにいかない時、確かにそういう時に怒っていました。理解してもらえるように考えて相手の気持ちを思いやって伝える大切さ、計画を立てて一つずつ大切にして進めること、自分の行動が良いか悪いかを考えてから行動する大切さを知りました。それが出来るようになったら、悲しみを持っている人の傍にいることが出来ること、経験する一つ一つの感情の意味を知ることが、必ず誰かを支える力になっていることを知り、これからは周りの人に感謝しながら自分も支えられていることを意識しながら、笹山さんのように生きていきたいと思います。

惜しい! 笹原さんです(笑)。この時は授業の中で、“感情のコントロール”というお話をしたので、そのことを指しているのだと思います。

私は現場でご遺族とお話をする時、気持ちをニュートラルに保ちます。自分の感情を優先させてしまうと自分中心になってしまい、自己主張を押し付けることになるだけでなく、相手の希望を読み取ることも感じることもできませんから。優しさとは、全てを言う通りに聞き、形にすることではありません。私は専門的なことと実務経験からたくさんの情報を持っているので、さまざまな情報の中から最も大切なことを選び、提案し、ご遺族と一緒に形にしていくことで、亡くなられた大切な人の火葬までの限られた時間を深い時間に変えていきます。

その時、絶対に傷つけない言葉を選び、最もうれしいと感じてもらえる言葉を使います。相手を思いやることができれば、目の前の人もこちらを思いやってくれます。とてもいい関係になることができ、思い合うことで深い時間に変わります。

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