おもかげを探して どんど晴れ(7) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)

画・笹原 留似子

「幽霊と妖怪」

お看取りに立ち会わせて頂くことが多くなりました。「幽霊になって、会いたい人に会えるかな?」。時に、死を迎える人がそう話してくださることがあります。遺(のこ)されたご家族は「幽霊でも良いから会いたい」と強く願うことが多いのです。

幽霊って、一体なんだろう? 小学校に入学した時に初めて人の死に直面し、そのことについて考え始めて、気がつけば40年が経ちました。多くの人たちから幽霊の目撃談を聞いてきて、私自身も幽霊を見て、そうして話をしたこともあります。特殊な能力はたぶん必要なくて、きっとタイミングと波長なんだろうと、私は思っています。

ある盂蘭盆会(うらぼんえ)で講演させて頂いた時、そうした体験談を話しました。先方の代表の方から「ぜひ」というお声掛けを頂いたからで、人前でお話しするのは初チャレンジでしたが、かなりリアルに話したと思います。

私の場合、幽霊としっかり会話ができるのは大抵朝方で、目が覚めると誰かが居るという感じです。「おはよう」。幽霊に声を掛けられるわけです。「おはよう」と返事を返すと、用件を話し出す幽霊たち。大抵、亡くなられて四十九日を迎える一週間前から、何かしら問題を抱えて困って私を訪ねて来ることが多いようです。

「家族の夢に入れないから、ありがとうって伝えたいのに困っている」「時間がないのに、お母さんがまだ大好きなおかずを作ってくれない」。会社に行って数えると、あと3日で四十九日。時間がないとは、こういうことだったのかと、驚いて納得したことがありました。「ケーキが食べたい!」と出てきた小さな子の時は、その日の午後に今日があの子の誕生日であることを知って、そういうことだったのかと思い、ケーキを準備した……などなど。

幽霊は、自分が姿を見せたい人にだけに姿を見せるようです。だから、その人に見えても他の人には見えません。

「妖怪って、幽霊とどう違うの?」。ご遺族との会話で話題になることが多くあります。妖怪は、また違います。思い残したことがあったり、誰にも認められなかった人の心の一部がこの世に残り、姿形を変えて妖怪自身の目的をかなえようとします。怖がられても、逃げられても、反応さえしてもらえれば、自分の存在が認められたことになるので、それで目的達成となるわけです。目的を達成しても、元々、自身の存在がないから、また他の人の反応を求めていく。いろいろな妖怪がいろいろな目的で存在していると思います。この特徴を観察していると、生きている人もそういう傾向が見られる人がいます。妖怪の道に足を踏み入れているわけです。気をつけた方が良いと思うことがあります。

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