幸せのヒントがここに――仏典の中の女性たち(2) 文・画 天野和公(みんなの寺副住職)

画・天野和公

妻の鑑(かがみ)――ナクラマーター

「理想の夫婦」って、どんな感じだと思いますか? お釈迦さまから「夫婦のお手本」と褒められた二人がいるのをご存じでしょうか。

彼らはアンガ国の長者の家系で、お互い年若くして結婚しました。子供が生まれた後は息子の名前にちなんでナクラマーター(ナクラの母)、ナクラピター(ナクラの父)と呼ばれていました。

二人は自宅にお釈迦さまを招き、そろってこう訴えたこともあります。「私の伴侶がこんなにも素晴らしい人だとは思いませんでした」「生まれ変わってもぜひまた一緒になりたいのですが、どうすればいいのでしょう」。すごい質問ですが、本人たちにとっては一番の気がかりだったんですね。

それほど仲の良かった夫婦ですが、あるときナクラピターが重い病にかかり、いよいよ危篤となりました。しかしナクラマーターは取り乱すこともなく、気丈にも夫をこう励ましました。

「あなた、ほんの少しでも心配や憂いの心を抱えて死なないでください。思いを残さないで。そんな気持ちで逝くのは、一番惨めで苦しい死に方です」

「あなたは自分が亡くなったのち、私がちゃんと家を守れるか、子供を養えるか心配でしょう。でも私は綿を紡ぐのも、羊の毛を刈って編み物をするのも上手です。ちゃんとこの家を営んでみせます」

その後も、「私が他の人と再婚しないか心配ですか」「私がちゃんと信心を保てるか、戒を守れるか心配ですか」と、一つ一つ夫を思いやり、言葉を掛け続けました。