利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(8) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

画・国井 節

戦争回避のための「祈りと対話と行動」

北朝鮮問題が激化し、安倍首相は「国難突破」のためと言って衆議院を解散した。いろいろな争点をメディアは報じるだろうが、圧倒的に大事なのは、戦争と平和、そして立憲主義や民主主義の危機という論点だ。

その緊迫した状況の下で、私は『いま、宗教者にできること』と題した北朝鮮情勢に対する鼎談(ていだん)に参加した。まず、国家の命運がかかっている大事な局面において、このような企画を機敏に立てられた関係者各位に敬意を表したい。

【鼎談 『いま、宗教者にできること』】

その場では、戦争回避のための「祈りと対話と行動」の必要性が真剣に話し合われた。さらに立正佼成会では、『因果はめぐる――今、私たちは』という見解を公表されて多くの人々に知らせ、このような考え方が内外で広がるように働き掛けると伺った。

【本会が北朝鮮情勢に対する見解を発表】

これまでも書いてきたように、政治にも公共的な役割を果たすことが宗教には期待される。その最たるものが、戦争回避のために働き掛けることだ。戦争による死が生じないことは、およそどの宗教でも願うはずのことだからだ。関連諸国の政治家たちがさまざまな世俗的理由に動かされて戦争になりかねない時に、この世を超えた高い観点からそれを止めるように働き掛けるのは、宗教の公共的使命ですらあるだろう。

そのような呼び掛けを行うのは、まさしく公共的宗教の公共的宗教たるゆえんであり、尊敬に値する行動だ。もし戦争を止めるためにそれが少しでも役立てば、どの国においてであれ、人命を救うことになる。これほど尊いことはないだろう。

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